「学生時代はどれだけ食べても太らなかったのに、最近お腹周りのお肉が落ちにくい」 「オールで遊べたのは昔の話。今は1日夜更かしすると、翌週まで疲れが引きずってしまう」
ふとした瞬間に、こんな体の変化を感じたことはありませんか? 私は運動をずっと続けているのですが昔より回復が遅いと感じることがあります。
「老化」と聞くと、40代や50代になってから心配するものだと思われがちです。しかし、実は私たちの体は20代をピークとして、静かに変化を始めています。
この記事では、20代〜30代の若い世代から始まる「隠れ老化サイン」を解説します。。
(※隠れ老化:本記事では、見た目には分かりにくい加齢に伴う基礎代謝や筋肉量などの初期の身体的機能低下を指す言葉として使用しています。)
- 「20代だから大丈夫」は本当?若年層から始まる『隠れ老化』とは
- なぜ同じ生活なのに太るのか?「基礎代謝」のリアルな推移
- 体力低下の正体はこれ。20代から始まる「筋肉量」と「骨密度」
- 自宅で1分!自分の体が発する「エイジング・サイン」セルフチェック
- 一生モノの体を守る!若いうちから始める3つの科学的アプローチ
- まとめ
「20代だから大丈夫」は本当?若年層から始まる『隠れ老化』とは

私たちが「老化」という言葉を聞いてイメージするのは、白髪が増えたり、深いシワができたりといった目に見える変化ではないでしょうか。そのため、0代〜20代のうちは、自分には関係のない話だ、と思いがちです。
しかし、生物学的な観点から見ると、人間の身体機能の多くは20代がピークです。心肺機能、筋肉量、骨密度、そして細胞を新しく生まれ変わらせる能力など、身体を構成する様々なシステムは、20代半ばから後半にかけて絶頂期を迎え、その後は非常に緩やかな下降線をたどり始めます。
この20代〜30代の「緩やかな下降線」の時期に現れるのが、隠れ老化のサインです。 「階段を上ると息が切れる」「ちょっとした段差でつまずきそうになる」「脂っこいものを食べると翌日胃がもたれる」といった些細な変化は、まさに身体機能のピークを過ぎたことで生じる、体からのメッセージなのです。
特に現代は、スマートフォンやパソコンの普及により、学生であっても座っている時間が長く、活動量が慢性的に不足しています。そのため、昔の同年代に比べて、早い段階で身体機能の低下を感じやすい環境にあると言えるかもしれません。
なぜ同じ生活なのに太るのか?「基礎代謝」のリアルな推移
20代後半から多くの人が直面する悩みのトップが、「学生時代と同じ食事量、同じ生活リズムなのに、なぜか太る」という現象です。この謎を解き明かすカギとなるのが「基礎代謝(※1)」の低下です。
※1 基礎代謝(きそたいしゃ) 呼吸をする、心臓を動かす、体温を保つなど、私たちが「ただじっと生きているだけ」で消費される最低限のエネルギー量のこと。1日の総消費エネルギーの約60%を占めます。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」のデータを見ると、基礎代謝の基準値(体重1kgあたりの消費カロリー)は、年齢とともに明確に変化していることが分かります。
【年齢別の基礎代謝基準値(kcal/kg/日)】
- 男性
- 15〜17歳:27.0
- 18〜29歳:24.0
- 30〜49歳:22.5
- 女性
- 15〜17歳:25.3
- 18〜29歳:22.1
- 30〜49歳:21.9
(出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf)
この数値が意味するのは、「年齢を重ねるごとに、体重1kgを維持するために消費されるカロリーが減っていく」という事実です。
ではなぜ基礎代謝は落ちるのでしょうか? その最大の原因は、「除脂肪量(※2)」、つまり筋肉量の減少にあります。年齢とともに筋肉が減ると、熱を産み出すエンジンが小さくなるため、消費カロリーが減ってしまうのです。
※2 除脂肪量 体重から体脂肪の重さを引いたもの。主に筋肉、骨、内臓、水分などが含まれます。基礎代謝の高さは、この除脂肪量の多さに大きく比例します。
仮に、1日の消費カロリーが学生時代より50kcal減ったとします。50kcalは、クッキー1枚程度のわずかなカロリーです。しかし、これが1年間蓄積すると、18,250kcalになります。 脂肪1kgを消費するのに必要なカロリーは約7,200kcalと言われているため、「食べる量も運動量も変わらないのに、計算上は1年で約2.5kgずつ太っていく」ということになります。これが同じ生活なのに太るということです。
体力低下の正体はこれ。20代から始まる「筋肉量」と「骨密度」
体重の変化だけでなく、疲れやすさや体力の衰えもわかりやすいサインです。これには、私たちの体を支える筋肉と骨のエイジングが深く関わっています。
「サルコペニア」の足音は20代から
筋肉量は20代をピークに、何もしなければ30代以降、年率約1%ずつ減少していくと言われています。この加齢に伴う筋肉量の減少と筋力の低下を「サルコペニア(※3)」と呼びます。
※3 サルコペニア ギリシャ語の「サルコ(肉・筋肉)」と「ペニア(喪失・減少)」を合わせた造語。進行すると、歩行速度が遅くなったり、転倒のリスクが高まったりします。
本来、サルコペニアは高齢者の問題として扱われてきました。しかし、リモートワークやオンライン授業が当たり前になった現代では、歩く機会が激減しています。20代や30代の若年層であっても、活動量の大幅な低下により「隠れサルコペニア」とも呼べる状態に陥っている人が増えているのです。 筋肉が減れば、前述の通り基礎代謝が落ちて太りやすくなるだけでなく、体を支える力が弱まるため姿勢が悪くなる、肩こりや腰痛が治りにくい、すぐに疲れるといった不調に直結します。
一生を左右する「最大骨量」
もう一つ忘れてはならないのが骨の健康です。骨は一度作られたらそのままではなく、古い骨を壊し、新しい骨を作るというサイクルを常に繰り返しています。 骨の強さを示す骨密度は、実は20歳前後で人生のピーク(最大骨量:※4)に達します。
※4 最大骨量 人生で最も骨量が多くなる時期のこと。一般的に20歳代で最大となり、その後、40歳代半ばまでは維持され、加齢(特に女性は閉経後のホルモン減少)とともに低下していきます。
つまり、20代以降は「いかにこの骨密度を減らさずにキープするか」が勝負になります。10代〜20代のうちに十分な運動をしてこなかったり、過度なダイエットで栄養不足になったりして、この最大骨量を十分に増やせなかった人は、将来的に骨がスカスカになるリスクが非常に高くなります。
自宅で1分!自分の体が発する「エイジング・サイン」セルフチェック
現在のあなたの筋力やバランス能力が年齢相応に保たれているかを確認できる簡単なテストをご紹介します。
これは、日本整形外科学会が提唱している「ロコモティブシンドローム(※5)」のリスクをチェックするための公式なテストの一部です。
※5 ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ) 骨や関節、筋肉などの「運動器」の機能が低下し、立つ・歩くといった移動機能が衰えた状態のこと。「運動器症候群」とも呼ばれます。
【実践】片脚立ち上がりテスト
下半身の筋肉の強さを測るテストです。
- 高さ40cmくらいの椅子(一般的なダイニングチェアなど)を用意します。
- 椅子に浅く座り、両腕を胸の前で軽くクロスさせます。
- どちらか片方の足を床から少し浮かせます。
- その状態から、反動をつけずに、床に着いている片足の力だけで立ち上がります。
- 立ち上がった後、バランスを崩さずにそのまま3秒間キープできればクリアです。
<判定結果>
- 余裕でできる: 現在の下肢筋力は十分に保たれています!
- グラグラするが、なんとか立てる: 筋力が低下し始めているサイン。要注意です。
- 反動をつけないと立てない/両足でないと立てない: 20代〜30代でこの状態の場合、同年代に比べて著しく下半身の筋肉が落ちています。早急な対策が必要でしょう。
※膝や腰に痛みがある場合は、無理に行わないでください。 (出典:日本整形外科学会『ロコモパンフレット』より一部改変して紹介https://locomo-joa.jp/assets/files/resources/pamphlet_ja.pdf)
一生モノの体を守る!若いうちから始める3つの科学的アプローチ
20代〜30代の体は、適切なアプローチをすればすぐに応えてくれます。 忙しい学生や社会人でも無理なく続けられる、3つの対策をご紹介します。
アプローチ①:「貯筋」のための日常プチ・トレーニング
筋肉は、使わなければどんどん減っていきます。わざわざジムに通って何時間もトレーニングをする必要はありません。大切なのは、日常生活の中で「あえて筋肉を使う選択」をすることです。
- 階段を使う: エレベーターやエスカレーターを避け、階段を上り下りするだけでも、太ももやお尻の大きな筋肉(大腿四頭筋や大殿筋)を鍛える立派な筋トレになります。
- 週2回のスクワット: 歯磨きをしながら、あるいはお湯を沸かしている間に、15回×3セットのスクワットを取り入れましょう。下半身には全身の筋肉の約6〜7割が集中しているため、ここを鍛えるのが基礎代謝を上げる一番の近道です。
将来のために筋肉を蓄えておくことを、専門家の間では「貯筋」と呼びます。お金の貯金と同じように、若いうちからの積み重ねが将来の健康資産になります。
アプローチ②:食事の「質」の転換(タンパク質とビタミンB群)
「太ってきたから」といって、やみくもに食事の量を減らすのは逆効果です。栄養不足は筋肉量のさらなる減少を招き、余計に痩せにくい体を作ってしまいます。意識すべきはカロリーよりも「栄養の質」です。
- タンパク質: 筋肉や肌、髪の毛を作る一番の材料です。肉、魚、卵、大豆製品を毎食手のひら1杯分食べることを意識しましょう。
- ビタミンB群: 摂取した糖質や脂質を、エネルギーに変換するために不可欠な栄養素です。豚肉、玄米、納豆、青菜などに多く含まれています。
アプローチ③:最初の90分が勝負!細胞を修復する「睡眠」
私たちが眠っている間、脳の脳下垂体からは「成長ホルモン(※6)」が分泌されます。
※6 成長ホルモン 子どもの頃は身長を伸ばすために働きますが、大人になってからは、日中にダメージを受けた細胞を修復し、疲労を回復させ、脂肪を分解する「若返りホルモン」として働きます。
この成長ホルモンが最も多く分泌されるのが、「眠りについてからの最初の約90分」です。 つまり、睡眠の長さも大切ですが、それ以上に寝つきの良さと最初の睡眠の深さが疲労回復とアンチエイジングの鍵を握ります。寝る直前までのスマホ(ブルーライト)を控え、入浴は寝る90分前までに済ませて深部体温をコントロールするなど、最初の90分の質を高める工夫をしてみましょう。
まとめ
「疲れやすくなった」「お肉が落ちにくくなった」という隠れ老化のサインは、決してネガティブなものではありません。あなたの体からの大切なメッセージです。
筋肉量も基礎代謝も、ピークを過ぎたとはいえ、20代・30代であれば意識一つでまだまだ向上させることができます。
今日から階段を使ってみる。 お昼ご飯にゆで卵を1つ追加してみる。 寝る前のスマホ時間を10分だけ減らしてみる。
そんな小さな習慣の積み重ねが、5年後、10年後のあなたの体を、もっと軽やかに、健やかにしてくれるはずです。
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