保育士試験には「保育の心理学」という科目があります。
私は心理学部卒であり、心理職なのでそこまで苦労しませんでしたが、予備知識がない人にとっては難しいと思います。
そこで必ずと言っていいほど出題される「行動主義的発達論」。
ワトソン、パブロフ、スキナーといった人物名や、「条件づけ」という専門用語がたくさん出てきて、混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、行動主義的発達論の基本的な考え方から、重要人物3名の違い、そして「成熟優位説(ゲゼル)」まで、初心者にもわかりやすく解説してみます。

行動主義的発達論とは?(簡単な言葉でいうと)
行動主義的発達論とは、「子どもの発達は、生まれつきの遺伝や素質ではなく、生まれた後の『環境』や『学習(経験)』によって決まる」とする心理学の立場です。
この理論の最大の特徴は、心の中のモヤモヤとした感情や無意識といった「目に見えないもの」は研究対象とせず、外から観察できる「行動(刺激と反応)」だけを科学的に分析しようとした点にあります。
心理学の定義もこのような感じですね。
「どのような環境(刺激)を与えれば、どのような行動(反応)が引き出されるのか」を徹底的に研究したのが、行動主義の学者たちです。
1. ジョン・B・ワトソン(行動主義の創始者)
ワトソンは、行動主義心理学を創始したアメリカの心理学者です。彼は「S-R理論(刺激:Stimulus と 反応:Response)」を提唱し、人間の発達は環境からの刺激に対する反応の積み重ねであると主張しました。
ワトソンの極端な考え方を示す、非常に有名な言葉があります。
「私に健康な12人の乳児を与えてほしい。そうすれば、才能や適性、先祖の職業に関係なく、医者でも泥棒でも、私が選んだ任意の専門家に育て上げてみせる」
この言葉は、人間の発達が100%環境によって作られるという「環境決定論」を象徴しており、試験でもよく引用されます。また、アルバート坊やという乳児に「白いネズミ(本来は怖くない)」と「大きな音(怖い)」を同時に与えることで、人為的に恐怖感情を学習させる実験(アルバート坊やの実験)を行ったことでも知られています。
ここは試験によく出る印象です。
2. イワン・パブロフ(古典的条件づけ / レスポンデント条件づけ)
パブロフはロシアの生理学者で、有名な「パブロフの犬」の実験を行いました。
犬にエサ(無条件刺激)を与える前にベルの音(中性刺激)を鳴らすことを繰り返すと、やがてベルの音を聞いただけで唾液(反応)を出すようになります。
このように、本来は無関係だった刺激に対して、無意識・生理的に反応してしまう学習の仕組みを「古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)」と呼びます。梅干しを見ると唾液が出るのも、この仕組みです。
3. バース・F・スキナー(オペラント条件づけ / 道具的条件づけ)
スキナーは、ワトソンの行動主義をさらに発展させた人物です。彼が行った「スキナー箱の実験(ネズミやハトの実験)」は試験頻出です。
箱の中のネズミが偶然レバーを押したとき、エサ(報酬)が出るように設定します。すると、ネズミは自発的にレバーを押す行動を繰り返すようになります。
このように、自分の取った行動の結果(報酬や罰)によって、その後の自発的な行動が増えたり減ったりする学習の仕組みを**「オペラント条件づけ(道具的条件づけ)」と呼びます。
「成熟優位説(ゲゼル)」との違い
保育士試験によく出るのが、ワトソン(環境決定論)と、ゲゼル(成熟優位説)の比較です。両者は発達の捉え方が「真逆」であるため、必ず対比して覚えましょう。
| 項目 | ワトソン(行動主義・環境決定論) | ゲゼル(成熟優位説) |
| 発達の要因 | 環境や学習(後天的な経験) | 遺伝や内的な成熟(生まれつきのプログラム) |
| 教育のタイミング | いつでも、環境さえ整えれば学習可能 | レディネス(学習の準備性)が整うのを待つべき |
| 代表的な実験 | アルバート坊やの実験(恐怖の条件づけ) | 双生児の階段上りの実験 |
| 試験のキーワード | 「健康な12人の乳児」「S-R理論」 | 「レディネス」「神経系の成熟」 |
ゲゼルは「身体や神経が成熟する前(レディネスが整う前)に早期教育をしても意味がない」と主張しました。この「レディネス」という言葉が出たら、ワトソンではなくゲゼルを選びましょう。
行動主義的発達論は、実際の保育や支援の現場でどう生かされている?
行動主義(特にスキナーのオペラント条件づけ)は、昔の理論ではなく、現代の保育や発達支援の現場、さらには心理療法やソーシャルワークのアプローチにおいても非常に強力なツールとして使われています。
1. トイレトレーニングと「トークン・エコノミー法」
トイレでおしっこが成功したら、ご褒美として台紙に好きなシールを貼る。これはまさにオペラント条件づけの応用である「トークン・エコノミー法(代用貨幣法)」です。シール(報酬)を得ることで、トイレに行くという自発的な行動が強化(増加)されます。
2. 日常の保育における「正の強化」
子どもがおもちゃを片付けたとき、先生が「上手にお片付けできたね!ありがとう!」と大げさに褒める(社会的報酬)。すると、子どもは次も進んで片付けをするようになります。望ましい行動に対してポジティブな結果を与えることで行動を増やす、行動主義の基本です。
3. 発達支援におけるABA(応用行動分析)
療育や発達障害の支援現場で広く取り入れられている「ABA(応用行動分析)」も、スキナーの理論がベースになっています。子どもの困った行動(かんしゃく等)の原因を「心の問題」とするのではなく、「その行動の前後でどんな環境の変化があったか(要求が通ったなど)」を分析し、環境を調整することで適切な行動へと導く科学的な支援方法です。
まとめ
行動主義的発達論の重要ポイントをまとめます。
- ワトソン:行動主義の創始者。「環境」が全てを決める(環境決定論)。
- パブロフ:パブロフの犬。「無意識の反射」を学習する(古典的条件づけ)。
- スキナー:スキナー箱。「自発的な行動」が結果(報酬・罰)で変化する(オペラント条件づけ)。
- ゲゼルとの違い:環境重視のワトソンに対し、ゲゼルは内側の成熟(レディネス)を重視した。
これらの用語の違いをしっかり理解しておけば、本番の試験で選択肢に迷うことはぐっと少なくなるはずです。
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